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Keutgen, N.; 松橋 信平; 水庭 千鶴子; 伊藤 岳人*; 藤村 卓; 石岡 典子; 渡辺 智; 関根 俊明; 内田 博*; 橋本 昭司
Applied Radiation and Isotopes, 57(2), p.225 - 233, 2002/09
被引用回数:10 パーセンタイル:54.86(Chemistry, Inorganic & Nuclear)植物内での物質移行の定量解析の試みとして、植物用ポジトロンイメージング装置(PETIS)での計測結果の伝達関数法による解析を行った。植物としてニラあるいはダイズを用い、葉あるいは茎の切り口からN-硝酸及びF-水溶液を投与し、得られた分布変化の画像を伝達関数法により解析し、ポジトロン放出核種の見かけの移行速度を求めた。その結果、ニラ葉中のF-水溶液の移行速度は1.2cm/min、ダイズ3小葉の中葉でのF-水溶液の移行速度は10.7cm/min、N-硝酸は11.9cm/minとなり、ダイズの小葉では硝酸と水の移行速度とほぼ同じであることが明らかとなった。これらの結果は、伝達関数法によるPETIS計測データの解析が、植物中での物質移行の定量化に有効な手法であることを示しており、環境ストレス要因が植物に与える影響の評価に役立つと考えられる。
石岡 典子; 松岡 弘充; 渡辺 智; 長 明彦; 小泉 光生; 松橋 信平; 久米 民和; 関根 俊明; 内田 博*; 辻 淳憲*; et al.
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 239(2), p.417 - 421, 1999/00
被引用回数:27 パーセンタイル:86.12(Chemistry, Analytical)これまで原研高崎のAVFサイクロトロンを利用して生物医学分野で有用となるラジオアイソトープの製造技術の開発を行ってきた。最近では、ポジトロン放出核種の製造技術の開発と二次元ポジトロンイメージング装置の開発により、植物での生理機能を解明する実験が可能となった。われわれが現在進めている植物における物質移動の動的な計測方法とそれらの実験に必要なポジトロン放出核種の製造技術及びその標識化合物の合成研究について発表する。
久米 民和
第23回日本アイソトープ・放射線総合会議論文集, p.1 - 8, 1998/00
植物用に開発したポジトロンイメージング装置を用いた研究を紹介する。TIARA AVFサイクロトロンを用いて、Coガス、NO、F-水、F-グルコース、C-メチオニンなどの標識化合物を製造し、植物に供給して植物体内における移行を計測した。Cに関して、Coを葉に供給したコムギにおけるC光合成産物の根への短時間の移行、とくに幼根の先端への蓄積を示す鮮明な画像を得た。また、C-メチオニンを用いたアミノ酸転流に関するデータを得た。これらは、生きた植物体内におけるC化合物の移行をほぼリアルタイムで画像化した世界で最初の例である。また、NOやNHを用いたイネやダイズにおける窒素転流、F-水を用いた水の動態計測の例などについても述べる。
久米 民和
放射線と産業, (79), p.25 - 29, 1998/00
ポジトロン放出核種の植物研究への利用について紹介する。TIARAが運転を開始して6年を経過し、ポジトロンイメージング装置を用いた植物の機能研究が本格化してきた。本報告では、研究の経緯、ポジトロンイメージング計測の特徴、装置の概要、植物を用いた研究例、今後の課題について述べる。とくに研究例としては、CO及びC-メチオニンを用いた炭素の移行・代謝に関する結果、NOやNHを用いた窒素の吸収-移行に関する結果、F-水を用いた結果などを紹介する。
石岡 典子
放射線と産業, (80), p.11 - 15, 1998/00
ポジトロンは、電子とともに消滅して511keVのエネルギーの線をほぼ反対方向に放出する。この線の両方を検出すると、2つの検出器を結ぶ直線上でポジトロンが消滅したことが分かる。そして、その近傍にポジトロンを放出した核種が存在したことが分かる。この特徴のためにC,N,F等のポジトロン放出核種は、トレーサーとして医学において盛んに利用されている。原研では、同じ原理を用いる植物用のポジトロンイメージング装置(PETIS)を開発し、植物体内におけるポジトロン放出核種の動きを二次元画面上で追跡することを可能にした。この装置を用いて植物の生理・生化学的な機能を解明するために、我々は高崎研TIARAのAVFサイクロトロンによるポジトロン放出核種の製造・標識合成技術の開発を進めている。ここでは、ポジトロン放出核種を製造するために開発した照射ターゲットシステム及び現在進めている植物実験用ポジトロン放出核種や標識化合物の製造について、その方法や特徴を分かり易く紹介する。
久米 民和
Radioisotopes, 47(3), p.283 - 284, 1998/00
ポジトロン放出核種を用いた植物研究について、原研で進めているポジトロン・イメージング計測を中心にレビューした。ポジトロン・イメージング装置は、検出面積:4850mm、画像分解能:約2mm、ほぼリアルタイムでの計測が可能である。F-水(半減期110分)を用いた実験では、障害を受けた植物での吸収・移行変化を調べ、障害の検討に有効に用いることができる可能性を示した。C(半減期20分)に関しては、CとCの発見と植物への利用の歴史を紹介するとともに、COを用いた光合成産物の根への移行について述べた。N(半減期10分)に関しては、安定同位元素Nとの特徴を比較し、Nの利用の現状を紹介した。また、大学とのプロジェクト共同研究で進めているC-メチオニンやNOを用いた研究例の紹介も含めた。
石岡 典子; 松岡 弘充; 渡辺 智; 長 明彦; 小泉 光生; 関根 俊明
Synthesis and Applications of Isotopically Labelled Compounds 1997, p.669 - 672, 1998/00
植物生理機能の解明研究に必要であるF及びN(ポジトロン放出核種)を製造するために、氷をターゲットとして用いることが可能な新しいターゲットシステムを開発した。原研高崎のAVFサイクロトロンで開発された二次元ポジトロンイメージング装置とこれらのポジトロン放出核種をトレーサーとして用いることにより、植物の物質移動を動的に計測することが可能となる。本報告書では、新しく開発した水ターゲット照射システムとそれを用いたF及びNの製造技術の開発について発表する。
久米 民和; 藤村 卓; 石岡 典子; 内田 博*; 辻 淳憲*
Nature, 389(6649), 1 Pages, 1997/09
浜松ホトニクス(株)が有しているNatureの広告ページに、ポジトロン放出核種を用いた植物体内における水、光合成産物、窒素化合物などの物質の動的イメージ計測法を紹介する。植物用のPositron Emitting Tracer Imaging Systemを開発し、植物の生体機能研究への応用を検討している。核医学分野で既に実用的に用いられているPETに比べ、本装置は空間分解能が2.5mm以下と高く、低濃度のトレーサーでのS/N比の良いイメージを得ることが可能などの特徴を有している。本手法を用いて、根から吸収された水や硝酸、葉で合成された光合成産物等の植物体内での挙動についての検討を行っている。切りバラにF-水を投与して、節部における移行を調べた結果、投与直後に葉への移行が観察され、その後ゆっくりと茎上部へ移行することが観察された。このように、本計測システムを用いることにより、植物の節部での溶質分配などの計測が可能である。
久米 民和; 松橋 信平; 島津 昌光*; 伊藤 均; 藤村 卓; 安達 勝彦*; 内田 博*; 石岡 典子; 松岡 弘充; 長 明彦; et al.
Applied Radiation and Isotopes, 48(8), p.1035 - 1043, 1997/00
被引用回数:53 パーセンタイル:95.04(Chemistry, Inorganic & Nuclear)ポジトロン・イメージング装置を用いて、植物における水の吸収と移行について検討した。TIARAのAVFサイクロトロンで製造したF-水を用いて、葉の画像解析を行った。植物体としてはダイズを用い、切断した茎から2分間F-水を吸収させ、葉におけるF活性を50分間計測した。非照射のダイズでは5分後に最大値に達したが、100Gy照射試料では最大値に達するまで15分を要し、また吸収量も低かった。従って、100Gy照射試料では外見上の変化はほとんど認められないが、吸水能力は著しく低下していることがわかった。また、葉柄に近い部分の葉脈を切断した場合、吸収されたFの減少が認められるが、葉の先端でも活性が検出され、葉肉から水のまわりこみが認められた。以上のように本装置は植物体内での物質の移行をみるのに有効な手段であり、植物機能解明の研究に役立つと考えられた。
久米 民和
放射線と産業, 0(73), p.60 - 61, 1997/00
生体外から非破壊で計測でき、生体の機能を生きたままの状態で観測するのに有効な手段であるポジトロン・イメージング計測の植物への応用を紹介した。本研究に用いている装置では、ほぼリアルタイムで植物体内のポジトロン放出核種の二次元画像を得ることができる。ここでは、F(半減期110分)を用いた照射切りバラにおける画像、C(半減期20分)を用いたコムギの葉からのCOの取り込みと根へのC化合物の移行について簡単に述べた。
久米 民和; 松橋 信平; 島津 昌光*; 伊藤 均; 内田 博*; 辻 淳憲*; 石岡 典子; 松岡 弘充; 長 明彦; 関根 俊明
Plant Nutrition for Sustainable Food Production and Environment, 0, p.169 - 170, 1997/00
線照射処理した植物について、ポジトロン・イメージング装置を用いて物質の吸収・移行を計測した。4.85.0cmの平面検出器を2台対向させ、消滅線を計測することにより画像を得た。ダイズの切断した茎からF-水(5MBq/ml)を2分間吸収させた後、30分間計測した結果、葉におけるF量は10分以内に最大値に達した。しかし、100Gy照射して障害を与えたダイズでは、吸収・移行が著しく遅くなり25分以上を要した。切りバラの殺虫を目的として800Gyの線を照射した場合、花部へのFの移行は非照射に比べ著しく少なかった。2%のグルコースを添加すると吸収回復効果が認められた。これらの結果は、肉眼的な開花遅延効果に対応しており、植物の障害及び回復機能を調べる上で有効な手段となり得ると考えられた。
久米 民和
理研シンポジウム 加速器を用いた陽電子利用技術の展開, 0, p.19 - 22, 1996/00
ポジトロン・イメージング装置の植物生体機能解明研究への応用について紹介する。ポジトロン放出核種は生体外から非破壊で計測可能であり、生きたままの状態での生体機能の計測に有効である。原研に設置したポジトロン・イメージング装置の特徴を紹介するとともに、植物への応用例について述べる。F-水やNaを用いた実験では、切りバラの照射による障害と糖による回復効果に対応した移行変化が示された。NO,CO及びC-メチオニンを用いた実験では、短時間におこる植物体内での吸収、移行、代謝に関して得られた結果について述べる。これまでに、C-メチオニンを用いた実験などで、茎と根の間に集積場所があり、そこから若い葉に再分配されていることを示す画像が得られている。